市民の皆さんへ

市民の皆さんへ

前市長の樋渡です。いよいよ、明日から告示。今日の思いをブログにつづります。
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まず、年末お忙しい中、リコールに伴う辞任による選挙に至ったことは、その責任の一端は私にあります。申し訳ありません。

私は、市長就任してからちょうど1か月後に、総務部、企画部、市民病院等から重要課題や財政のレクを受けました。

衝撃的だったのが、このまま手をこまねいていれば、市長、うちの市は夕張のように倒産する、その最大の原因となるのが、市民病院だ!という悲痛な同僚職員の声。

私にもいい案はありません。ただ、古庄市長時代に、コンサルの経営診断書において、「直営は無理。民営化、独立行政法人化」の方針が出ていたので、私は、直ちに庁内に市民病院の経営改革に関する委員会を立ち上げ、議論を開始してもらいました。

喧々諤々の議論の上、去年の年末に民営化か独立行政法人化が決定。また、この議論の延長上に、今年の春に、民営化の方針が決定。その間、議会でも相当な議論をして頂きました。
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この一方で、私には、市長着任時からすでに市外・県外の病院から「相当な補助金を出してもらえれば、市民病院を引き受けてもいい。」という打診。私にだけでも9つの病院が。

その中の一つに、和白病院(池友会)がありました。市民病院はもともと、救急告示病院なので、その本来果たすべき性格は似ているし、何よりも、池友会の病院そのものに活気がある。患者さんにもいろいろ聞いてみましたが、池友会はとても評判がいい。

しかし、市長という仕事は、誤解が多いのですが、「決定権」はどこにもありません。あるのは、議会に対する「提案権」と議決事項を誠実に行う「執行権」しかありません。

議会で議決を頂くには、相当な説明責任が必要になります。そのためには、その提案には客観性がなくてはいけない。そういう意味から、民間移譲先の全国公募、第3者による選考委員会(委員長:信友九大大学院教授)による議論、そして、全国初になる市民公開プレゼンテーション、そして、選考委員会の決定をそのまま議案として提案して議決を頂きました。


重ねて、先に書いたように、市長になる前に既に「直営は困難。」という結論、そして、2年以上にわたる議論に次ぐ議論。その間、34回にわたる大小の説明会。半年にわたった市報による広報。
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私としては十二分な説明をしてきたつもりであります。医師会にも、県の沖田医師会長には今年の正月明け、医師会のメンバーには、その前後で様々な形で相談をしてきました。しかし、説明不足と言われれば、その批判は甘受したいと思います。


また、その一方で、平成16年度から始まる国の医師臨床研修制度が始まり、市民病院のような片田舎の公立病院には、勤務医の確保が困難に。市民病院でいえば、平成16年度には、16人のドクター。私の市長着任時の平成18年度には11人のドクター。たった2年で、5人(32%)の減だったのです。さらに、ますます減っていく方向にあるのは、全国的な例を見ても武雄が例外であるはずがありません。

なお、平成20年の急激な市民病院の医師の減少は、私の責任だ!という声がありますが、私はそのようには思っていません。医師の気分を害したのは事実かもしれませんが、さまざまな角度から議論をした上で、残っていただいた医師の皆さんには感謝申し上げるととともに、去った医師の皆さんとは、医療の形をめぐる見解の相違だったと思います。


財政的に見れば、26億円を超す赤字を含む負債。この8年間、一日当たり、90万円を超す負債を積み上げてきた計算になります。しかも、この中には、耐震設計、電子カルテ等の導入をやっていない8億円は入っていませんし、総務省からの10億円を超す補助金も入っていません。

すなわち、一般会計から1円も出していないというのは曲解中の曲解で本来は上記の8億円を投資的に支出し、なおかつ、その投資から医療収益を上げていなくてはならなかったのです(その分だけ赤字がまた増大。)。

さらに、ベッドの回転率が85%を超せば黒字になりますが、一度たりとも達成できず、なおかつ、平成19年度の上半期を除けば、8年間すべて赤字。

つまりは、赤字を重ねていきながら、借金返済を迫られるという企業としては全く成り立たない構図どころか、つぶれたときの返済は市民丸抱えになってしまう極めて危険な水域に達していたのです。なおかつ、開設時6年後は黒字になるという計画がありましたが、達成できていないことは前記の説明で明らかだと思います。

つまりは、県内10市の公立病院がすべて赤字、また、全国的に見ても8割の公立病院が赤字である、というのは医師(勤務医不足)、これに伴う赤字であることは言うまでもありません。


この赤字、医師不足で、救急医療、通常の医療ができなくなること、そして、これにより、病院が廃院に追い込まれた例は、夕張市、銚子市立総合病院を見れば明らかだと思います。まさに、市民病院が潰れてから議論をしても遅いのです。


おかげさまで、全国的にも極めてレアな救急医療の再開、そして、持続的な救急医療の提供ができたことも、市民、議会、そして、池友会の深い理解のおかげであります。

8月11日に救急医療が再開されて、7割以上の患者様、ご家族様から高い評価を頂いています。

この流れを平成22年2月1日の民間移譲につなげていきたいと思っています。池友会に移譲後も、現在の市民病院は廃墟とせずに、池友会の責任で、何らかの形で活用して参ります。また、市内のもっと交通の便の良い所に新たな病院が建設されます。その際に、近くに正看護師の看護学校、看護寮等ができます。


私は、この病院群をコアとして、さまざまな市民の皆さんにとって便利なお店や機能、住居が集積していく、地方で初めてとなる医療を中心としたまちづくりを展開していく所存です(東京には聖路加病院の例があります。)。ここに新幹線、インター、温泉、旅館、ホテル、ゴルフ場、農業等が組み合わされることによって、長期療養型の都市の創設に結び付けていきたいと思っています。

また、500人から700人の雇用、固定資産税等が毎年数千万円規模で入ってきます。この税収は、子育て・福祉等にあてていきたいと思っています。


議会並びに私たち行政が考える、上記の民間移譲がいいのか、真逆の直営がいいのか、まさに今回の選挙の最大の争点はここにあります。民にできることは民で、官がやらなければいけないことは官で、というのが大原則。市民に負担を強いて市民病院を直営で運営することは、単なる問題の「先送り」だと確信しています。


今回は議論の時間とスピード(救急再開)という難しい異次元の2つの要素のバランスをどこにとるのか、これが最も難しかった。医師会、共産党からこの判断を理解していただけなかったのは残念です。

さらには、経営形態を決めるのは、非情な言い方かもしれませんが、行政と議会の責任であり、医療内容そのものを決めるのは、ドクターと市民の皆さんの権利だと思い、まず、焦眉の急となっていた経営を決めるのが先と判断したことは今でも間違っていないと思っています。両者を混在してはいけない。


また、市政は病院ばかりではありません。雇用、中山間地問題、福祉、さまざまな問題が山積しています。スピードを要求されるもの(今回の市民病院問題)は先送りせずに対処し、十分、時間を取るべきまちづくりの問題にについては、今以上に時間をかけて市民の皆さんの声に耳を傾けてまいります。

例を一つだけ。年明けに早速、緊急雇用対策本部を市長直轄で立ち上げたいと思ってます。


行数が尽きました。まだまだ語りたいのですが、この辺で。市の選挙管理委員会の要請で、1週間ブログは閉じたいと思います。公約はこちら

最後までご覧いただきありがとうございました。
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by fromhotelhibiscus | 2008-12-20 23:35
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