危機の宰相

所得倍増という信念に殉じた三人の男たちの物語

と書くと、古臭くて面白くない話に聞こえそうですが、若き沢木耕太郎のルポはやはり違いました。

氏の代表作の一つである、テロルの決算と対をなす物語。しかも、視点が三人とも敗者(ルーザー)というのも興味深い。

政治家・池田勇人、エコノミスト・下村治(佐賀出身)、宏池会事務局長・田村敏雄という、大蔵省という組織での敗者3人が、戦後の激動期を経て、所得倍増という夢を現実化していく物語。

さすが、沢木耕太郎。四半世紀を経て蘇った恐るべき作品。しなやかでのびやかな文章が、三人を支え、ドラマを紡いでいく。

実務家としては、確固とした信念を持ち、それに基づく政策を実行していけば、世の中は良い方向に変わっていく、その一つの実例として捉えました。

これは歴史ルポとしても、三人の熱くまたクールな物語としても、そして、政策論としても、名著として、歴史に燦然と名を残すものと思います。
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by fromhotelhibiscus | 2008-06-22 23:17
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