マーラーの9番に思うこと

音楽を聴いています。ずっと音楽が好きでいろいろ聴いてきましたが、それでも今思うと、走りながらエネルギーを補給する、あるいは一時的に精神を緩めるつもりで聴いてきたような。

今は時間が止まり、立ち止まっている中で、音楽を聴くと、今まで見えなかったものが立ち上がってきます。一番驚いたのが、1938年録音のブルーノ・ワルター指揮マーラー交響曲第9番。ナチスの迫害を受けながら、それでもこのユダヤ系の名指揮者は、諦めずに命の危険に晒されながら奏でる。それは、ウィーン・フィルも、観客も同じこと。

ラストの第4楽章に至るまでただただ美しく澄んでいるのですが、ラストはウィーンフィルのアンサンブルが濁るくらいに前のめりになるくらい、「諦めと咆哮と」って思っていたんですが、第4楽章の7分40秒に一瞬の、ほんの一瞬の間が。その一瞬の間を経て、かすかな「希望」の旋律が。

思い違いかもしれませんが、指揮者ワルターが私たちに託したこと。それは希望。あの絶望下での希望。絶望と希望。狂気と静謐。それは大いなる矛盾。立ち止まっているから、前に進む必要性を教えてもらいました。しかし、まだまだ立ち止まります。
マーラーの9番に思うこと_d0047811_22373278.jpg

by fromhotelhibiscus | 2015-01-17 22:53
<< 南魚沼の雪の中で これからについて >>