セバストポールレポート②

セバストポールも終盤に。小雨が降る中、市内をジョギングした後、今日も朝から全開で現場へ。昼前から太陽が出て、カリフォルニアらしい陽気に。

まず訪れたのは市の消防署。ビル署長が迎えてくれたオフィスには、他に制服を着た人が見当たらなかったのですが、それもそのはず。市から雇用されているのはビル署長一人だけで、他の36名は全員ボランティア。
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ボランティアの多くは、定年後の市民や就職を控える学生。彼らは緊急時には無線を聞いて現場に駆けつけます。日本で言うと消防団に近いですね。署長の本音は常勤の消防士を増員したいが予算がない。一方で、ボランティア数の確保は必要。課題もあるようでしたが、いずれにしても、警察署と同じく市民が自らの手で町の安全を支えているのだと実感

その後、市内の学校を訪問。今回は公立のミドルスクール(中学校)を訪問したのですが、セバストポールには、公立、私立に加え、家で学習を行うホームスクールと呼ばれる学校があるそうです。ホームスクールは、不登校の子どもだけでなく、極めて優秀な子どもも通っているのだとか。ちなみに、ミドルスクールの運営資金は、生徒数と学校の成績順で決まるという厳しさ。なので、財源の少ない学校では、保護者がファンドレイズして学校をサポートしています。
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ミドルスクールの授業は、デジタルアートやドラマ、音楽などの選択科目が充実。個人の選択が尊重されています。授業の進め方は、「いかに楽しく授業をやるか」がポイントとのこと。授業の楽しさが、生徒の興味と参加につながるそうです。あと、中学生でも高校の授業を受けることができ、本人の能力とやる気に合わせて飛び級に近い仕組みがあることにびっくり。日本では義務教育での飛び級は認められていませんが、いつかセバストポールと同じことが日本でも起こるような気がします。

学年は少し下がりますが、5〜7才のクラス(キンダガーデン)では、異学年学習が行われていると聞きました。保護者によれば、これはかなり効果的とのこと。学年が上の子は下の子に教えながら、下の子は上の子を見ながら社会性と個性が自然に磨かれていく。今度、武雄市の官民一体型小学校で取り入れようと思っている異学年授業に通ずるものがあり、我々もしっかり進めていきたいと思います。

午後からは、まちづくりグループの人たちと意見交換。

セバストポールでは、都市計画や福祉、アート、デザインなど、多様な分野の自主グループが数多く活動しています。プロジェクトごとに複数のグループが組み、チームとなってプロジェクトを動かしていく。それを行政と議会が支える。小さな町であることを抜きにしても、プロジェクトのプランがすぐに実行に結びついていて、スピード感にあふれています。

例えば、スローな町を目指しているチタ・スロウという団体。新しい商業施設エリアと古き良き街並みエリアが隣接しているのにつながりがないという声に対して、チタ・スロウが考えたのが、双方をつなぐ州の道路にデザイン塗装してしまおうというアイデア。シティ・リペアと呼ばれています。様々な市民グループと市役所がチームになって、リサーチはAグループ、デザインはBグループ、資金調達はCグループ、州への道路の使用許可は市役所、というふうに役割分担をしながら一緒に進めていく。まさに官民一体。来月にはもう実際に塗装するそうです。あらゆる人や制度を巻き込んで、それぞれの課題をクリアしてあっという間に形になっていくのだから、とにかくスピーディー。ホームページはこちらです。

また、セレス・コミュニティー・プロジェクトという団体。がん患者やC型肝炎患者、障がい者に、野菜中心のお弁当を提供するプロジェクトなのですが、ボランティアはほぼ全て高校生。しかもボランティアの申込みが殺到し、面接試験までしています。ここでは、ボランティアが経験年数によって3つのレベルに分けられ、上級グループの子が下の子を指導していく。また、社会福祉や栄養学などの講義を休憩中に受けられたり、利用者が直接やって来てお礼を述べる機会があったりと、彼ら彼女らのモチベーション向上にもつながっているとのこと。一口にボランティアといっても、単に高校生を活用しようという狭い視点ではなく、子どもたちの将来の成長も見すえた、持続的な取り組みとなっている、とてもユニークな取り組みでした。
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また、古い建物を活用して新しい価値をつくる動きも。街の中心部にある、りんご農場主が持っていた広大な旧作業場群がリノベーションされ、オーガニックのワインや野菜、地ビールを扱うレストランやバー、スーパーだったり、地元のモダンアート作品のスペースが集う集客エリアに。平日なのに多くの人で賑わっていましたが、とにかく快適でかっこいい。ちなみに、私が以前訪れた2年前にはありませんでした。
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セバストポールは、全米でも注目されるほど、姉妹都市間交流に積極的な町ですが、誰でも歓迎する素晴らしい町を自分たちの手で作りたい、という強い気持ちを訪れるたびに感じます。そしてこの町は、前回訪問した時とは比較にならないくらい、圧倒的なスピードで変わっていく。こんな活き活きとした町でなければならないし、僕もセバストポールに負けないような武雄市を目指して頑張っていきたいと、今回の訪問で心新たにそう思いました。

今回のセバストポール訪問が充実していたのは、セバストポール市と武雄市の交流の礎となっていただいているワールドフレンズの皆さん、セバストポール市民の皆さん、何より現地でコーディネートしてくださった水谷さんご夫妻のおかげです。本当に感謝しています。ありがとうございました。

by fromhotelhibiscus | 2014-08-22 06:24
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