【書評】へうげもの

僕は本好きでいろんなものを読んできたけど、おそらく、人生に一番影響を与えたのは、小中学校の時に読んだ手塚治虫、石ノ森章太郎の一連の作品、そして、「パタリロ」、「めぞん一刻」じゃないかって思います。しかし、高校時代からマンガからは遠ざかり、活字が読書生活の中心になってましたが、最近、「このマンガだけは読んだほうが良い!」と、作家さん、文化人、マスコミの皆さんから薦められ、手に取ったのが、これ。

へうげもの、と書いて、「ひょうげもの」と読ませます。

今、コミックで17巻まで出ていますが、あらすじは、「あるときは信長、秀吉、家康に仕えた武士。またあるときは千利休に師事する茶人。そしてまたあるときは物欲の権化。戦国~慶長年間を生き抜いた異才・古田織部。甲冑、服飾、茶、陶芸、グルメetc. お洒落でオタクなこの男こそ、日本人のライフスタイルを決めちゃった大先輩だ!!」ってな本。

普通、この時代のストーリーは、信長、秀吉、そして、側近らの血なまぐさい「戦い」が主眼になるんだけど、この本は、「数奇」を巡る戦い。そういう意味では、合戦よりもさらに血なまぐさいんですね。「茶器」一つで城いくつか建てられるほどの価値と意味を有したあの時代を描いています。最初から抜群に面白いのですが、回を追うごとに、その面白さのレベルが格段に上がります。恐るべし。

今まで不思議に思っていた利休の「黒」好き、三成の「最期」や「乙」の意味などが、次々に、このマンガで得心しました。古田織部がいなかったら、唐津焼そのものが無かったこともびっくり。利休と鋭く対峙しつつ和合し、利休より俗で、柔らかく、利休より聖なる存在。筆者のまるで彫刻のような筆致で、読み手をぐいぐいとあの時代を舞台に引き回す。数々の名品がそこに。矛盾に矛盾を重ねた狂気の沙汰、「美」を前にした絶叫と咆哮と沈黙と。フィクションとノンフィクションのシームレス状態。整理されたカオス。

これは、活字じゃ描けない。漫画の独り舞台。「へうげもの」を読み進める最中、活字の本も数冊並行していたんだけど、何とも薄味な気がして困りました。こりゃ、活字、特に小説が売れなくなるのも分かる、と独り合点。これから、名マンガの世界へ旅立ちそうです。

このマンガで確実に人生が変わりそうです。もっと早く読んでたら良かった。
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by fromhotelhibiscus | 2014-02-23 13:11
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