武雄市「いのしし課」猪突猛進

今朝(11月24日)の読売新聞(佐賀版)に、発足4年の「いのしし課」が掲載されています。全国的に見ても、そして、武雄市だけで見ても過去10年で最も少ない被害額となるなど、効果が上がっています。

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記事の内容は以下のとおりです。


田畑を荒らすイノシシの被害防止に向け、武雄市に「いのしし課」が誕生して4年。農林水産省の統計によると、イノシシによる農作物被害は全国で60億円を突破し、各地で被害が深刻化するなか、同市の昨年の被害額は、過去10年で最も少ない310万円まで減り、成果を上げている。(原聖悟)


 2008年、同市での捕獲頭数は2000頭を超え、農作物の被害額は1440万円に上っていた。市内ではイノシシが市街地周辺にまで出没し、住民に不安が広がった。警察や猟友会など相談窓口が分かりづらいとの声も相次ぎ、09年4月、市は専門部署を設置。「いのしし課」という名称の明快さから、今では出没情報や被害などの情報が確実に集まるようになった。現在、5人の職員を配置している。


 同課では、地元森林組合と協力して「いのししパトロール隊」を結成。パトロール員が、出没や被害の通報を受けると、すぐに現場に向かい、被害状況の聞き取りや出没地の確認などを行う。このほか、地元猟友会が経験豊富な会員らで捕獲隊「トッテクレンジャー」を組織し、市も農地進入防護柵の設置補助を行い、今年度までにイノシシ被害を受けやすい農地の約95%で柵設置を終える予定だ。


 パトロール隊には、警察犬の訓練施設でイノシシ駆除の訓練を受け、イノシシの臭いを探知して追いかける鳥獣被害対策犬が同行することも。方言で犬(いぬ)を「イン」と呼ぶことから、「公務犬(こうむいん)」と呼ばれ、現在2頭が活躍中。さらに、タブレット端末を利用した「市イノシシ被害・対策システム」を導入。出没地や被害地点、捕獲場所やわなの設置場所などをデータ化し、情報共有や被害対策に速やかに生かせるようにしている。


 市では、里山整備など被害を生まない環境作りにも力を入れる。


 例えば人里近くの耕作放棄地は、人気がなく、雑草が茂り、山から下りてきたイノシシにとっては絶好の隠れ場所となる。一方、刺激や香りの強い作物を好まないことから、中山間地の耕作放棄地で市名産「レモングラス」などのハーブやニンニクといった香りの強い作物の栽培を進めている。今年度までに約2ヘクタールの耕作放棄地を再生し終える予定で、樋渡啓祐市長は「被害が起きてからではなく、起きる前にしっかりと対策を行うことが成果につながっている。地域と一体となって“猪突猛進”で取り組んできた結果だ」と胸を張る。


 同課は「高齢化が進む中、今後は地域の後継者の育成が課題だ。行政だけではなく、地域と一緒になって鳥獣被害に強いまちづくりをしていきたい」と話す。


<捕獲後はブランド肉化>

 これまで“厄介者”だったイノシシを一転、地元の特産品として売り込む試みにも挑戦している。


 武雄市が2009年に開設した武雄鳥獣食肉加工センター「やまんくじら」では、捕らえたイノシシを食肉加工して「武雄市産イノシシ肉」として全国に販売している。市によると、年間約300頭を加工し、売り上げは約600万円に上るという。


 従来、捕獲後は土中に埋めたり、業者に依頼したりして処分費用がかかっていたが、センターを設置後、イノシシは「収入」に変わった。


 部位や質によるが、1キロ・グラム約3000円から販売。秋口に山でどんぐりをたくさん食べたイノシシの上質な肉を使った「グラン」、冬から春にかけてとれた肉を熟成させた「パルファム」としてブランド化。1キロ・グラム約4000~6000円の高値で取引している。

 

 市内では、給食や地元温泉街の旅館でも提供。ソーセージやハンバーグなどの加工品や、カレーなどの具材としての商品開発も行っている。

 

 いのしし課の江口和義主任は「自然を無駄なく使い、観光振興やまちづくりにもつなげたい」と話している。

(2013年11月24日  読売新聞)

by fromhotelhibiscus | 2013-11-24 09:11
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