【書評】天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債

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仙台藩の足軽の家にもらわれてきた子、のちの高橋是清は、横浜で英会話を学び、13歳で渡米。契約社会のアメリカでは、奴隷として売られる体験もし、帰国後は官・民でさまざまな職に就く。教師、官吏、相場師、銀行員…、彼の武器は堪能な英語力と、型破りな発想力、そして持ち前の楽天主義。転職と失敗を繰り返しつつも、現場からの視点を失わないその姿勢は、一流の財政センスへと結実してゆく。第一級の歴史経済小説!

前例にとらわれない柔軟な発想と、現場経験に根ざした解決能力を身につけ、銀行家として踏み出した高橋是清。日露戦争の戦費調達という使命を帯び、ロンドンで極東の新興国・日本をアピール、人脈を駆使して日本国債の売り出しを成功させる。以後、昭和金融恐慌の鎮静化、世界恐慌後のデフレ脱却など、危機のたび手腕を振るった不世出の財政家は、なぜ二・二六事件の凶弾に倒れなくてはならなかったのか?



小説「日本国債」の幸田真音が放つ最新刊である天佑なり

主人公は高橋是清。そう、アベノミクスの原点と言われる人間。佐賀との関わりでは、唐津で、日本銀行や武雄温泉楼門を設計した辰野金吾博士を教えている。あの当時、ここまで世界的だった人間は高橋是清のみで、清廉潔白、直情、破天荒などといったあらゆる言葉が高橋是清に当てはまる。

幸田さんの代表作は、「日本国債」だと思うんだけど、それを遙かに上回るスケール感とその一方での緻密感。幸田さんの決定打となった。おそらく、幸田さんは百田尚樹さんの「海賊と呼ばれた男」をかなり意識していると思うんだけど、百田さんが描く主人公は、男の生き方、すなわち、ロマンに主軸があったとすると、幸田・高橋是清は、歴史に翻弄されながら、その一方で果敢に歴史に挑んでいく、その様が対照的。そういう意味では、百田さんのほうが女性的で、幸田さんのほうが男性的な描き方に映る。面白い。特に、ラストでそれが色濃く出ているけど、あえて言わないことにします。

ともあれ、実際のノンフィクション(に近いもの)で、これだけ、ワクワクドキドキするストーリーが連発して出てきたのは、読書好き、取り分け、ノンフィクション好きにはたまらない。心から、「天佑なり」、お薦めです。おかげで、幸せな新幹線移動となりました。蛇足ですが、次は、どなたか、田中角栄をお願いします。
by fromhotelhibiscus | 2013-10-14 23:58
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