【書評】ボックス!

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もはや、日本で人気ナンバーワンの作家となった百田尚樹の作品。ボックス!

天才的なボクシングセンス、だけどお調子者の鏑矢義平と、勉強は得意、だけど運動は苦手な木樽優紀。真逆な性格の幼なじみ二人が恵美寿高校ボクシング部に入部した。一年生ながら圧倒的な強さで勝ち続ける鏑矢の目標は「高校3年間で八冠を獲ること」。だが彼の前に高校ボクシング界最強の男、稲村が現れる。

上下2巻の文庫版。冒頭、電車の中で、風のように現れる、風のように去る主人公の一人、鏑矢義平。衝撃的な出だしから一気に怒濤のラスト、エピローグまで。百田さんの処女作「永遠の0」の唯一の欠点は、出だし、序盤がたるいところ。しかし、ボックス!あたりになると、その辺は良く弁えられているのか、導入部分からエライコトになる予感。

前にも書きましたが、「影法師」のようなアクロバティックな展開も無いですし、「モンスター」のようなおどろおどろしい展開も無い。あるのは、どこにであるような日常と高校生活。しかし、逆にそれだからこそ、高校1年生の主人公に、僕らおじさんでも感情移入できる。しかも、高校って確かにそうだったよねって懐古趣味にも浸れる。しかし、話は転がるような展開を見せる。百田作品の特徴ですが、何度か涙が出てきました。しかし、小説で泣けるとはね。

青春小説としても、小説としても白眉。僕は人生を閉じるとき、この本を西方浄土のお供としてこの本を入れてほしいって思ったくらい。それくらい面白かったです。
by fromhotelhibiscus | 2013-07-16 23:20
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