【書評】解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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帯にも大書されていますが、このミス、週刊文春で第一位。ただ、僕が買った頃は、全然地味な本でした。僕の場合、代官山の蔦屋書店でミステリーを物色中、信頼するブックコンシェルジュの方に、今までの僕の読書遍歴と好みを伝えて、一任したら、この本を持ってきてくれました。自信満々でした。

それが、解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 。半年くらい経ってようやくこの本にたどり着きましたが、あっという間に、僕の読書時間を独占。

八歳の時にある出来事から言葉を失ってしまったマイク。だが彼には才能があった。絵を描くこと、そしてどんな錠も開くことが出来る才能だ。孤独な彼は錠前を友に成長する。やがて高校生となったある日、ひょんなことからプロの金庫破りの弟子となり、芸術的腕前を持つ解錠師に……
非情な犯罪の世界に生きる少年の光と影を描き、MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞など世界のミステリ賞を獲得した話題作


てな本ですが、あらすじ自体は大したことは無い。しかし、この本が天才的なのは、かなり大胆なほころびが、登場人物の魅力そのもので、打ち消すどころか、それを逆に魅力的にしているところ。しかも、いくつかあります。これは作者が確信犯的にやっているのか、そうでないかは分かりませんが、僕は、こんな本は初めて。読み違いだと思って、数回読んだが、やっぱり、綻んでいる(笑)。

が、読めば読むほど、マイク、そして、その恋人が何て素晴らしい。すっかり言葉を失ってしまったマイクに感情移入します。最後は驚愕のエンディングに涙します。訳もこなれているし、僕はミステリーというか素敵な素敵なファンタジーとして読んだ。もし、代官山蔦屋書店のブックコンシェルジュがいなかったら、この本にはとてもたどり着いていません。そういう意味では、本の出会いとは人と出会いでもあると改めて思う今日この頃。武雄市図書館も、そういう出会いが増えればいいなって思っています。

この本、お薦めです。
by fromhotelhibiscus | 2013-07-07 23:11
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