【書評】世界一周デート アジア・アフリカ編 (幻冬舎文庫)

世には困った本があります。今、プノンペンのホテルで、これを書いていますが、なかなか寝付けず(珍しいことです。)、手に取った本が、日本から持ち込んだ世界一周デート アジア・アフリカ編 (幻冬舎文庫)
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旅の本といえば、僕にとって、白眉は、沢木耕太郎の「深夜特急」。20代前半の僕はこの文庫本を読んだ一週間後、初のアジア、しかも、沢木さんが足を運んだ香港へ。当時、九龍空港で、市街地を縫うように飛行機が飛んでた。そして、空港から、満員のおんぼろバスで、旅人、住民の巣窟である  へ。マカオに渡り、リスボニアホテルでカジノ。半ズボンで入れず、人力車のおっちゃんから、履いていたズボンを借りて、というか交換して、おっかなびっくり、カジノへ。儲けたお金で、タイの極安のプーケットへ。何で、安いか、分かったんです、雨季だから(涙)。香港からプーケットへの便は、さながらハネムーン便。2列の飛行機は、カップルばっか。僕だけ一人。あとも珍道中が続くんだけど、それはそれとして、沢木の「深夜特急」は僕のことを鷲づかみにし、多くの人たちが多大な影響を受けていたことを後で知る。

沢木は仰ぎ見る巨人。僕にとっては憧れの旅人。沢木耕太郎は、僕にとって、いつしか、神様になってました。だから、どんなに旅の本を読み漁っても、沢木に肩を並べる、あるいは、それを超す本はついに存在しなかった。

が、20年経って、僕にとって、意外なところで、この本を超える本が出てきた。それが、この文庫本。出会いは、そう武雄市図書館。売り本コーナーのところにひっそり、並べられていたんですが、新婚旅行が世界一周っておもろいな、その一瞬の判断で、手に取って購入。僕は、めったなことで、ジャケ買いはしません。本を購入するときは、信頼する「本読み」のお薦めが90%。あとの10%が勘。

この本の主人公は、夫婦になったばっかりの若いカップル(表現がおかしいか。)。アジアから陸路、珍道中。数々の出会い、多くの夫婦げんか、勘違い、別れ、沈没(同じところに長期滞在すること)、子どもたちが出てくるんですが、夫婦で、それぞれ連弾のように、コラム風に書き進める。それが軽妙洒脱(古い?)で。僕も、そうそう、貧乏旅行の最中、こんなことあったよね、あんなことあったよね、同じことで騙されている、なんて、微笑ましく一気に読んだ。そして、この本自体がもう10年前のことなので、現在の視点から、10年前の出来事を書いている。これが秀逸。沢木耕太郎が、旅の巨人として絶対一人称として書き連ねていて、どう考えても、僕は、ああいう風にはなれない。ストイックだしね。悪くいえば、直線的・平面的。しかし、この夫婦は、本能の赴くまま、行くがまま、旅している。しかも、繰り返しになるけど、夫婦それぞれ書いている上に、10年前のこの旅のことを振り返っている。すなわち、4者の視点があるわけですね。そういう意味では、蛇行的・立体的。そう、よっぽど、凡人である自分に近いのです。

43の今、憧れから等身大の自分へ、って回帰しているのかもしれません。もう、性格や行動パターンは変える気も無いし、変えられないし。なんか、それでいいんだよ!って温かく声をかけてもらったような本でした。旅好きなそこのあなた、ぜひ、どうぞ。

明日で3日間のシンガポール&カンボジア滞在は終わり。明日もカンボジア政府要人との会談。カンボジア滞在記はあまりにも強烈なので、ちょっと落ち着いてから書こうと思います。
by fromhotelhibiscus | 2013-05-13 00:25
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