疾走する異端、佐賀県武雄市長・樋渡啓祐 「人口5万のまちでロールモデルを作る」

静岡県にお住まいの石川秀樹さん(ジャーナリスト)が、武雄市にお越しになり、私にインタビュー。この1年、新聞・ネット・テレビ・雑誌・大学など、取材依頼が殺到しています。これは、嬉しい。なぜって、広告費を使わなくて、皆さんが武雄市のことや私のことを報じてくれる。私の肩書きは、「武雄市長」。ということは、私を報じることはほぼイコール武雄市を報じることになる。

そういう観点から、「週刊金曜日」の悪意丸出しの追放記者などのオファー以外、可能な限り、受けるようにしています。その石川さんがまとめてくださった記事。見事です。

リンクはこちらですが、全部だと掲載できないので、主要部分をコピー&ペーストしました。読めば、かなり勢いで言っているのがよく分かります。しかし、これが今の僕。また明日は変わっていると思います(笑)。

なにか精魂つき果てた感じがする。

レコーダーに録音したインタビューを原稿に起こすくらいのこと、大した仕事ではないのに、午前、午後と計6時間もかかってしまった。疲れた理由は、作業の手間ばかりではないかもしれない。

やはり、樋渡啓祐市長というまれに見る個性に対峙(たいじ)したからなのだろう。僕は、彼がいっていること、やろうとしていることに少しも違和感を感じない。だって、やろうとしていることは武雄市民のために、市の行政をよいものにしよう―と、ただその1点だけなのだから。

佐賀県武雄市は全国1700ある自治体の1つ。人口5万人の小さな市にすぎない。しかし、そういう自治体こそ、1人のすぐれた政策感覚をもつ市長が舞い降りただけで、見る間に変わっていく。

決して「異能」なのではない。合理的な改革だ。ただ、急ぎに急ぎ、またまっすぐだから、地方の中で分相応に波風立たずにみんなで静かに滅びていこう(もちろん本人たちは「滅びる」なんぞ思ってもいない)という人たちからは、“異物”を見るように嫌われる。

インタビューで、知事や国会議員になりたいと思わないか、問うてみた。知事は中間管理職、議員は大勢の中の1人。「そんなもの」という感じで、言下に否定した。「それをやるより、僕は武雄市という現場でロールモデルをつくる」といった。400のやりたいことがある、やっと3つか4つできたばかりだと。

地方分権、地方改革、言葉は美しいが上滑るばかりの現場で、彼は最適な解を求めて走り続ける。「仕掛品でいいんだ。スピードこそが最高の付加価値だ」と彼はいい続ける。批判するなら動いて別の答えを出してみろ、といいたいのだろう。「やっていることがすべて正しいなんて思っていない」。やって見てダメなら直すし、修正すべき点があれば直せばいい。

そうやって、よいも悪いも答えを出して、全国の自治体よ、武雄みたいな小さな市でやっているんだぜ、言い訳しないでやってみてくれ。追随するでも、反面教師でもいいから(自分のまちを)前に進ませてくれ、と祈っている。

国会議員になって、法律を変えて地方に仕向けて見せるより「これが手本だ」と示した方が早い、と彼は思っている。さらに400個も独自の政策を実行したら、地方はどんなに変わることだろう。

Facebookの取材で赴きながら、僕は「樋渡啓祐」というキャラクターそのものに強く魅かれたようだ。
ただのレコーダー起こしではない。「格闘」した後のような疲れを感じているのは、たぶん、そのためなのだろう。
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★樋渡啓祐武雄市長インタビュー

―武雄市が力を入れている「F&B良品」が、東京ビッグサイトで開かれた「東京ビジネスサミット2012」で特別賞を受賞しました。おめでとうございます。市長は担当職員の福田史子さんの名前を入れてFacebookに書き込みをされていました。いつも市の職員の名前を出すんですか?

樋渡啓祐市長 公務員は匿名でなくちゃいけないってのは変なタブーで、個人が集合して組織というのはできている以上は、その中心になっている人の名をちゃんと出してやるというのが基本的なスタンスですよね。

―職員の名が出ている方が反響がいいような気がします。

樋渡 そうですね、みんなそれを求めていると思いますよ。武雄市役所とか僕とかいうのも悪くはないけど、次の興味はマクロを構成しているミクロの人はどうだろうって、なりますもんね。


―そういう意味ではFacebookというのは独壇場ですね。

樋渡 元々「非匿名」だしね、そりぁそうだと思いますね。僕らがやっていることに対してはすごく親和性が高いと思います。

◎Facebookには思っているままを書いている
―きのう佐賀新聞に「武雄市内に福祉避難所がない」ということが報じられ、それを読んだ市長は即座にFacebookに「これはいかん、すべての責任は私にある。今年度内に、福祉避難所を複数設置することにしました」と書いていました。この率直さには驚きました。「いいね!」も1000近くついていました。

樋渡 「いいね!」の数を増やそうというのじゃなくて、自分の思っていることをそのまま書いているだけなんでね。よく「これ狙ったでしょう」とかいわれますが、全然。一部の人にはそう見えるかもしれないけど、そんなことをすると大部分の人は白けますよ。自分の思っていることをその時の感情で書くというのが大事だと思っているんで。

―Facebookを書くときに、「職員に向かって」という意識で書くことはないですか?

樋渡 ないです。僕の頭の中では職員も市民もないですね。政治家なんでね、もちろんここの市役所を率いているという思いがないわけじゃないんだけど、それよりも政治家、ステイツマンなんで自分の主義主張を述べるということにつきます。あんまり誰それを意識して書くということはないですよ。それをやった瞬間、白けるんですよ、それ以外の人たちは。「俺たちはかやの外かよ」って。市民も職員も分けへだてなく、おもしろいって思ったことを書く。

―外から見ていると、今度の記事にしてもかなり踏み込んで書いています。

樋渡 それもあえて踏み込んでいるってことじゃなくて、思っていることを素直に書く。僕の中でタブーってないんですよ。ここまで、とかいうのが。ここ以上、ここ以下というのがないから。いや、だから批判もいっぱいいただきます。まあ、仕方ないですよね。そういう風にコントロールしていないから。

◎僕は反権力、反権威
―それは、昔からですか?

樋渡 昔からですね。僕は反権力ですから。反権力、反権威ですね。まず疑ってかかりますもんね。だからそうはいっても矛盾なんですよ。自分は権力もっている立場にあるからね。だけど反権力とか反権威であることは、いや、権威は尊重しますよ、尊重はするけども、それまでには疑いますよね、やっぱ。「本当に権威なの?」とかね。「これは権力を支持してるだけじゃないのか?」って。だから権力や権威をかさに着る人に対しても徹底的に攻撃しますもんね。

―リコール騒ぎというのもそんな感じ?

樋渡 そうですね、完全に感情ですよね、お互い「感情」。もちろん僕の場合、「経営」ってのもありましたけど。(大赤字の市立)病院を経営しなければならないってのがあったんで、僕は経営はできないから、それでは民間にお任せしますって。

◎F&B良品は年度内に20自治体に広がりそう
―(職員さんに出していただいたコーヒーがうまかったので)武雄温泉街を歩いていたらコーヒー屋さんで「F&B良品に出店しています」というポスターを見かけました。

樋渡 僕らはそういう人たちを応援するという役割があるし、地域の所得向上というのをしなければ地域として成り立っていかないからね。

―2011年11月7日からだから、ちょうど1年たちました。

樋渡 現在、全国の6自治体が参加、年度内に20自治体くらいいきますね。

―いきなりですけど、Facebookを使って何か「次の一手」みたいなものはありますか?

樋渡 いや、ないです、全然。思いついたときやります。そうそう、基本、僕はやっていることもいっていることも反射神経なんで。(ここで市長に電話が入り中断)
えーと、なんでしたっけ。次の一手? そのとき考えます。

―こんなことばかり聞かれるでしょう。

樋渡 そう、でも同じこと答えます。僕は反射神経の人間なんで。だから思いついたら、とりあえずやってみる。で、ブログとかFacebookとかツイッターでその感触を試す。それがマーケティングなんですね。(市立図書館の)Tポイント導入だってマーケティングですよ。「ああそうか、これだけ反応あるんだよね」とか。

―武雄市のホームページを昨年8月、Facebookページに切り替えました。先日、ページへのいいね!、つまり「ファンが2万人を超えた」とありましたが、そのうち武雄市民はどれくらいいるのでしょう。

樋渡 (市民は)5%くらいじゃないですか。1000人くらいでしょう。うちは人口5万人くらいなんで、いろんな人たちが(直接)いろんなことをいいますよ。(市長と市民の距離が)元々すごく近いんですよ。僕になってからよけいに近くなってるもんね。道を走ってても声掛けてきますよ。(※市長は市民ランナーでもある)

◎図書館革命、見えてきたら賛同はもっと広がる
―図書館革命を批判している人は市長の意図を逆にとっていますね。

樋渡 仕方ないですよ、それは。見えないもんだから。CCC(という業界異端児)と僕とという組み合わせだから、すごく反発があるというのはよくわかりますよ。でも、だって例がないから。実際出て来てみると、その批判というのはだいぶ減るんじゃないですかね。それは時間の問題だと思ってます。恋愛と図書館は時間ですよ。カエサルがいった通りでね、人は見えるものでしか判断できないですよ。ある意味、図書館のロールモデルになると思いますよ。Tポイントもそうだし。
今の「自由」というのは不自由な状態からの自由じゃないんですね。マルクスが生きていた時代の自由と違っていて、今の時代の自由というのは「選択肢」の問題なんですよ。こういう田舎っていうのは、元々選択肢がないというのが田舎ということであって、選択肢がないというのが不自由ということなんだと。だから、選択肢を提示するというのがすごく大事だと僕は思っています。田舎というのは画一的になりがちなんです。それがずっと延長線上をいくと「タブー」になっちゃう。そういうの大っ嫌いなんですよ。

◎武雄市で全国のロールモデルを作る
―田舎に限らず、ほとんどの自治体がそうじゃないですか。

樋渡 だから僕らがたった人口5万の辺ぴなところでそれを「できる」「やれる」と提示できれば、ほかの自治体は言い訳できなくなる。今までは「いや、前例がない」とか「ほかに例がない」とかいうじゃないですか。でも、武雄がやると言い訳きかなくなる。そこが東京都とか大阪府と違うとこなんですよ、僕らの位置づけというのは。東京、大阪がやっても「あれは特別だ」となるけれど、武雄は全国自治体1700分の1だから。首長さんたちに言い訳させないようにしようと思います。

―そういえば、市役所の玄関に全国からの視察の掲示が出ていますよね。どれくらい理解して帰っているんでしょう?

樋渡 インパクトは理解していますよ、政治家だから。それが大事なんですよ。『よくわかんないけども、これはスゲェーぞ』というので十分。それでどうなっていくかというと、今度は(自治体の)職員が来るんですよ。だから議員には感性で訴える。シビレさせる。今度、行政の人が来たらその人たちには理性で訴えかける。そこはマーケティングを分けるんですよ。議員の場合は発信力あるから、Facebookやツイッターに書いてくれというんです。そうすると横に広がっていくから。
ここに物見遊山で来る人はいません。そんな者が来たら僕に怒られますから。「帰れ!」っていいましたよ、何度も。だからみんな真剣勝負。
反論する人もいますよ。そういうのは大歓迎。自分のやっていることが全部正しいなんて思っていないから。間違っていたら直せばいい。最適解を求め続けていれば、将来的にもいい解答が生まれるというのが僕のスタンスです。だから「将来どうするんですか?」といわれても僕には答える術がなくて、3年後、5年ごといっても外れますもんね。そんなとこに労力を使うよりは、今起こりうること、起こっていることにきちんと誠実に応えるということだと思います。

◎メディアの注目を集める劇場化、「それは意識してやっている」
―市長がやっていることは必ずマスコミに書かせることを意識していますね。

樋渡 もちろんもちろん。書いてもらえるように時期も内容も考えます。場合によっては見出しまで考えますよ。記者会見でも懇談のときでも、そのまんま記事になるようにしゃべる。

―僕はFacebookというのは広がりにくいメディアだと思うんです。だから、そこを広げるために市長はマスメディアを使っているのかな、と思ったんです。違いますか?

樋渡 そうそう。メディアが僕のFacebookを追いかけてます。

―それは孫正義さんのツイッターもそうですね。

樋渡 橋下(徹)さんもそうかもしれないですね。僕はツイッターよりFacebookの方が好きなんで、そこに書くわけだけど、書いた瞬間にメディアから問い合わせが来たりしますもん。

―直接、間接に記者と話し合いをしているようなものですね。

樋渡 そうそう。自分は「メディアだ」と思っているから。だから、その選択肢も増やしているんですよ。ここだと佐賀新聞しかない。でもFacebookなら誰でも見られるし、(メディア側の)編集権をなくすことができるじゃないですか。編集権を有するのがメディアだから、テレビでも新聞でもラジオでも。その編集権を今度、自分でもてるわけですよ、発信もできるしね。編集して発信するというのがメディアですよね。それを信じるかどうかは消費者というか、市民が判断してくれればいい。

◎名前が「肩書き」になる時代がやっと到来した
―みながそれをやり出せばすごい市長が生まれるし、普通の人がFacebookをやり本音で書けるようになれば世界は変わる、と僕は思っているんですが。

樋渡 さあ、それはどうですか。変わらないんじゃないですか。でも、さらけ出すという点では今までの媒体と違うんでね、緊張感というか親しみ感というのは今までのメディアではなかったものですよね。発見もあるし。『ああ、あの人がいってるのか』みたいな。だから、自分が肩書きになる時代がやっと来たなと思うんですよね。今までは例えば「電通にいます」とか、「朝日新聞社にいます」とか、「財務省にいます」「総務省にいます」というのが肩書き、ステイタスだったじゃないてすか。そんなのってつまんないですよね。それよりも自分の名前が肩書きになるといったほうが、よっぽどおもしろいですもんね。だから職員にもいってますが「自分の名前が肩書きになるようにがんばれ」といってます。例えば「○○△△のいる武雄市役所になれ」って。「その方が絶対に楽しいぞ」というのが、やっとわかるようになってきたですね。

―市長在職6年半ですか。そしてFacebookをやり始めて約2年。

樋渡 本格的に使いだして1年ですね。

―市長は有名だからFacebookを使いやすいのだと思っていましたが、使い始めのころのウォールを見てみると、ちゃんと苦労されてますね(笑)。

樋渡 反応、全然なかったです。「選挙にきく」って日経BBかなんかに書いていたから始めたのに、全然反応なかった。『なんじゃ、これ?』でしたね。(苦労は)ツイッターでもそうですよ。「有名」という意識はないですよ、全く。

―Facebookを市長のような手法で使うのは難しい。

樋渡 それはどう使ってもいいわけですよ。日記風に書く人もいるし、それは全然かまわない。それこそ選択肢ですよ。僕みたいに使うのも選択肢のひとつ。Facebookについて僕は誰も参考にしてないし、(参考になる人が)いないから。

◎樋渡市長流にFacebook本社ものけぞった
―話は変わりますが、今年8月にFacebookの本社に行かれましたね。

樋渡 ええ、行きました。呼ばれたから。「来てください」といわれたから行きましたけど。FacebookもGoogleも、ちょうど時期が合ったからいいなと思って。

―行ってみて、どうでした?

樋渡 思った通りでしたね。こういう集団だからFacebookとかGoogleってのが生れてくるんだろうなってだけですね。行ったから自分が変わったとかいうことはないです。むしろ僕らの発言に向こうが驚いていた。Facebookの本社はのけぞつてましたね。例えば、市のホームページを全部Facebookページにしたとか、うち(武雄市)のイントラ(組織内ネット)をFacebookにして非公開のグループにしてるのにびっくりしてましたから。なおかつFacebookで通販やるに至っては、ほんとにのけぞっていました。
日程が合わなくてマーク・ザッカーバーグには会えなかったですが、後で広報が上げたら、彼も驚いていたそうです。

―世界中にどこにもないということですね。

樋渡 そうそう。だから、ビッグワンでなく、オンリーワンを評価するアメリカの先取り精神、っていうのは感じましたね。アメリカというのは、問題はいっぱいあるけれども、イノベーションが生まれるというのはそこにある。いいものはいい、って。日本の場合は、「これを他の人はどう思ってる?」ってなるじゃないですか。あんなところにイノベーションなんか生まれるわけがないし、僕みたいな政治家、登場しませんよ。
話は変わるけど、僕が存在しているってことに関していうと、それは非常に不思議ですよ。普通、落ちますよ、このタイプは。まず間違いなく落ちる。だってもう、議会で暴言吐いて名誉棄損を受けてるし、住民訴訟で21億円の損害賠償請求を受けてるしね。普通は阿久根市長と同じで、普通の市民だったらすごい拒否感をもちますよね。もってる市民もいますけど、だけどみんな笑ってますもんね。「あー、また始まった」みたいな(笑)。
人気はやはりあるんでしょうね。だから図書館で市民アンケートをとったら、7割が賛成。新聞記者がいってましたけど「この7割というのが樋渡さんの支持ですね」と。図書館イコール樋渡だとみな思っているわけだから。

―7割というのはすごい支持率です。

樋渡 体感温度でいえばもっとありますよ、今。ただ、僕の場合は余計なこといいますからね。あと、ものすごく言葉足らずだったり。そうそう、そりぁ、誤解はいくらでも……。意図している部分もあるし、『おーっ、こう来たよね』と意図しないものもある。絶えずやっぱ劇場化ですよね。

―劇場をつくることを意識していますか?

樋渡 それは、してますね。劇場化というのは一石十鳥くらいの効果があるんですよ。メディアが反応する、あるいは市民が感応する、職員が揺さぶられる、で、自分の意識もわかりやすくなりますもん。副次効果として反応を得やすくなるとか。だから劇場化は絶えず意識してます。

―自分自身、引けなくなりますしね。

樋渡 ほんとほんと。図書館だって病院だって(リコール騒ぎの要因となった市立病院の民間移管問題)みんなそうですよ。こんだけ矢のように批判されると嫌にもなりますよ。『でも、いっちゃったしな。もうルビコン河渡っちゃったし』ということが、何度もありますよ。

◎リアルが一番、声掛けしてくれる市民がいることが大事
―10月24日にシニアFacebook講習会がありましたね。市長が講演した。反響はどうでした?

樋渡 100人くらいだったですかね。でも、あれは動員。平日ですしね、兼業農家が多いから集まりっこないですよ。

―ということは、武雄市民自体にFacebookが普及しているということではなさそうですね。

樋渡 全然。普及しないと思いますよ、僕は。しなくていいと思ってますから。だって、リアルが原則ですもん。リアルをないがしろにしてこういうデジタルの世界が、というのは異様な世界でね。やっぱりリアルが大事ですよ。もうあくまでFacebookやソーシャルネットワークというのはリアルの補完ですよ、市民にとっては。
まあ、そうはいっても、今までのIC寺子屋に900人以上が受講して平均年齢が65歳を越していてね、でなおかつ今、順番待ちってことはやはり関心が生れている。その主な人の意見を聞いてみたら、「Facebookページを見たい」とか「意見をいいたい」とか、あるいは僕に「文句をいいたい」とかという人たちがいるんで、ある意味、ちょうど過渡期かもしれないですね。

―市民のFacebook活用、あながち無理ではないじゃないですか。

樋渡 でも僕は市民にFacebookを使えとかっての、全然期待していないですけど。だけどその辺歩いているとみんな声を掛けてくれるから、リアルで。それが一番ですもんね。

◎現場で働ける「市長」が自分にとっての最適解
―衆院選が近付いていますが、応援に行かれないですか。

樋渡 行きません。僕は好き嫌いが激しいし、行ったら落ちたなんてことになると困るから。支持政党はないですよ。自分党。この指止まれです。どことも組まない。いろんなところから「うちに入れ」とかいわれるけど、しがらみ作りたくないから。義理があるからこれをしなくちゃならないというのは嫌だから。

―知事選に出たいと思うこと、ありませんか?

樋渡 まったく興味ないですね。おもしろくもなんともないもの、あんな中間管理職。

―国会議員はもっと何もできないですね。

樋渡 そうそう。だから市町村長が一番おもしろい。だって、現場の司令官だから。こんなおもしろい仕事ないですよ。

―でも今の政治を見ていて、こんなていたらくだから俺が、と思わないですか?

樋渡 それを僕は現場でやりますから。向き不向きというのがあるんですよ。僕は議員とかには向かない。大きな組織を率いることもできない。僕には今の感じがジャストフィットですよね。適性というのがあると思います。

―それではもったいないと思いますが。

樋渡 だからそれは、ここでロールモデルを立てて、参考にしたいところはどんどん使えばいいし、反面教師にしてください。そっちの方が(国会議員として地方を変えようとするより)早いですよ。FB良品だってそうだし、図書館もそうなるでしょう。僕らはここで、(地方自治体が「だからやれない」という)言い訳できないモデルをつくる。

―なんだか、やりたいことは全部やったような気がしませんか?

樋渡 全然しません、そんなもの。まだいくらでもありますよ。400のうち成し遂げたのはまだ4つくらいですよ。やりたいことはあっても、タイミングが早すぎるとかというのがあるんですよ。

―それだとあと何年もかかりそうですね。

樋渡 だから、死ぬまでやろうと思って。落ちるまで。4年ごとに是非については有権者に判断していただく、ということだと思いますけどね。

―市庁舎の建て替え計画も進んでいるとすると、後は観光ですか?

◎普通の人のための「ダボス会議」を武雄市で
樋渡 観光も今、進みつつありますね。それは流れに沿って。
あとは、どこにもできない観光をやうと思ってます。スイスのダボスのようになればいいなと思っているからFacebook係をつくったし、来年は図書館のシンポジウムのでかいのをやりますけど、ここに来ればいろんな人に会えたり、知を共有したりとか、発信できる場にする。ザルツブルグは音楽祭で集めるじゃないですか。ダボスは知の交流拠点といわれますけど、ダボスの場合は経営者とか政治家とかのだけど、うちは「市民のダボス」にしたいんですよ。いろんなやる気のある人たちが来て、そこでいろんなものを共有する。うちは温泉というアドバンテージもあるから。そこでまたいろんなことを考え、また休んでもらう。

―武雄市に視察に来たら武雄温泉に泊ってほしいですよね。

樋渡 うん、それは僕も考える。しかし温泉というのはいくらでもあるし世界遺産もあるわけだから、それ(温泉)で売れるというのは無理で、他にできないことをやるというと、僕らが観光資源になるということ、行政が資源。

―ということはやはり、Facebookの出番がありそうですね。

樋渡 そう思います。

by fromhotelhibiscus | 2012-12-02 23:43
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