【レビュー】親鸞ー五木寛之ー

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新しき人間・親鸞を描く、渾身の長編小説!

混迷と激動の時代を疾走した巨人。その苦悩は、今の私たちと同じ悩みであり、その決断は現代の闇を貫く。

数々の国民文学を生み出した著者が描く渾身の長編小説!


とのこと。五木寛之の親鸞

現在、文庫本2冊、続編としてハードカバー2冊出ているし、老年期の親鸞がまた刊行されるだろうから、道半ば。

読んでみての結論。傑作です。親鸞と言えば、抹香臭いし黴臭い辛気くさいと思いきや、さすが、五木寛之。さにあらず。瑞々しい。そして、特に出版を意図してなかったハードカバーのほうは、荒削りの魅力まである。親鸞が自分の友人、もっと言えば自分と同じ凡夫の代表として迫ってくる。そして、大衆小説としても最高。想像上の登場人物がとにかく異彩を放つ。ストーリーが分かりやすい上にダイナミック。「ミレニアム」ほどまではないけど、手に汗握る展開。

そして、ここからが五木親鸞の真骨頂。親鸞と言えば「悪人正機説」。大学の時に意味が分からず、いろんな先生の講義に出ましたが、結局のところ分からず。説がたくさんある上に、どれも説得力が僕にとってはない。そして、ご縁があって高僧の方々に伺いましたが、隔靴掻痒。

五木寛之が、この悪人正機説「善人なおもて往生を遂ぐ。いわんや悪人をや。」を真正面から答えているわけではないが、親鸞の行動を見て、はっと思わせる記述が、ハードカバーの後ろの方にありました。なるほど。そういうことだったのか。野暮になるので、僕からは書きますまい。

よく言われることですが、親鸞は秀才。真の革命家であり天才は、親鸞の師匠であった法然。僕の知人の高僧が言います。「親鸞の思想は我々でもギリギリ読める。しかし、法然上人は千年に一度、現れるかどうかの人間です。」。その意味が分かりました。法然が、閉ざされていた仏教を革命的に開放・下放し、親鸞がその意思を継いで、今に至るまで、我々の心の根に仏教の本源をインストールしている。その最も新しく親しみやすいインストールするブラウザが、この五木親鸞だと思います。

眩しいほどの法然親鸞の師弟関係、親鸞と妻との関係、弟子との交わり、庶民との会話。この本はあらゆる意味で歴史に名を残す本。ぜひ読んでみてください。
by fromhotelhibiscus | 2012-02-22 22:58
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