【書評】あんぽん 孫正義伝

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待ちに待った本が出ました。ソフトバンク社長の孫正義伝。題名はもとの苗字の安本から。佐賀県鳥栖市のお生まれとは当然知っていましたが、その生い立ちからして驚天動地。なにせ、極貧の中で鼻も曲がるような異臭の中ブタと一緒に寝起きしていた事実、大好きなおばあちゃんは、自分が若いときにはブタに自分の乳を与えていた、孫さんを一貫して助けた父親は、密造酒を作って売りさばいていた、など、読み物としても超一級。同じく貧しかった家に里子に出されたスティーブジョブズは比較にならない。

その孫社長が、どうやってサクセスストーリーを駆け上って行くのか、単なる成功物語ではなくて、今から一世紀前、韓国・大邱で食い詰め、命からがら難破船で対馬海峡を渡った一族に思いを馳せ、現地取材も敢行し、知られざる孫正義像を描き出す。

今読み終わったばかりで、本当にそういった歴史や環境が、本人のパーソナリティにどれくらい影響を与えるか、僕にはよく分からない。しかし、この本の凄みは、そういったヤワな推論を吹き飛ばすくらいに、在日三世の孫さんが形作られていく、その血なまぐさい、異臭漂う軌跡は理解できる。


このBlogにも書きましたが、孫さんとは、去年の3月22日、一緒に、古川康佐賀県知事の親書を携えて、福島県へ。福島県知事や市長、町長にケンカ腰で、放射能の影響が無い九州などの遠くのところに避難させるべきだと涙を流しながら話されていた姿は、p248〜249に克明に書いてあります。孫社長とはそれから丸2日間ずっと一緒。2人きりでいろんな話をしましたが、孫さんからは多くのこと、特にリーダーシップ、ガバナンスを学びました。

特に印象に残っているのは、「僕や市長のようなリーダーは、平時には無用の長物。僕らが必要不可欠になるのは、有事の時のみ。有事に真価が発揮できるかどうかなんだ。」と熱く語っておられたこと。
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その前に、目が点になった。僕へのインタビューが載っている。しかも、p244〜246。僕なりの孫社長論。すみません、失礼なことを言って。僕へのインタビューは、仙台市若林区で災害ボランティアを「チーム武雄」で行っていた時、昼間は忙しいので、たっぷり夜が暮れたときに、フラフラになりながら、でも、興奮していたんでしょうね、一気に1時間近く語ったことをまとめてあります。


僕の失礼な孫社長論はともかく、この本は偉業というより異形の主、孫社長を取り巻くすべてを語っていると思います。そういえば、こんなことがありました。ちょうど、週刊ポストで連載中に、「孫社長、こんなこと書かれていやじゃないですか?」って聞いたら、「いいんだ。いいんだ。全部書いてくれた方が。」と遠くを見つめる澄んだ目で笑いながらおっしゃっていたことが思い出されます。

アドレナリンが爆発して睡眠不足必至の興奮本です。よし今からやってやる、って思わせる衝撃の本。
by fromhotelhibiscus | 2012-01-15 22:25
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