【書評】被災地の本当の話をしよう/戸羽太

戸羽太。今、日本で最も著名な首長。そう、最も激甚な被災地である陸前高田市の市長であり、奥様を東日本大震災の津波で亡くしながらも、悲しいそぶりも見せず、陣頭指揮をとるヒゲのサムライ。

戸羽さんを初めて見たのが、テレビ。感情を押し殺しながらも、かえってその思いが伝わる。それでいて、論理明快。しかし、心配したのは、国や県に対してはっきりモノを言うあの姿勢。僕もまた、あんまりはっきり言うので、与党民主党から、市長選を始め様々な妨害やら嫌がらせを受けます。

似た人がいるなぁ、いつか会いたいって思っていたら、ハートタウンミッションの東京会合のときにそのチャンスが。


私が知る首長の中でも、突出していたのは、その背負うもの。戸羽さんの背中には、あまりにも多くの、そして、あまりにも多くの悲しみが、のしかかってました。

しかし、彼本来の強さとしなやかさとそして、これはあまり知られていませんが、私の親友ヒミ岡島さん並の類希なるユーモア感覚、平衡感覚で、これまでの修羅場を乗り切ってきたことがよく分かりました。

戸羽さんはどう思っているか知りませんが、僕は勝手に意気投合(笑)。それから、実際、陸前高田市に何度か伺ったり、電話でいろいろ話したり。


その戸羽さん、新書を出されました。「被災地の本当の話をしよう」。まるで、戸羽さんの悲痛な声がかぶさるがごとく。一気に読み上げましたが、涙無くして読めませんでした。

取り分け、奥様が行方不明になられてからご葬儀に至る場面、お子さんの想い、お子さんへの父としての想いのところ。そして、クライマックスは、誰の目からも見ても陸前高田市が復興したと認められる日がやってきたとき、高台にいる市長が、空の上の亡き奥様久美さんに向かって、

久美、陸前高田の町はお前が暮らしていた時より住みやすく見えるか?

俺がやってきたことは正しかったか?

あの日、助けてやれなくて本当にごめんな。怖かっただろう。これで勘弁してくれるか?


最後は、一縷ですが、しかし、確かな希望の書としてこの本は閉じられます。


戸羽さんが一番恐れているのは、国民の中から、被災地への思いが薄れて行くこと。僕も全く同感。僕の性格はしつこいこと。しつこく、被災者(地)のサポートを続けていきますが、さすが、武雄市民、タウンサポートで、100人弱の皆さんが、陸前高田市へ。武雄市民挙げて、サポートをしていきます。被災者(地)支援でも、武雄モデルが広がることを期待しています。

その思いを確かなものにするためにも、この畢竟の書を読んで頂ければと思います。
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by fromhotelhibiscus | 2011-09-18 22:10
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