【書評】オバマの戦争

原題は、OBAMA'S WARS.

そう、複数形なのは、イラクの戦争に加え、アフガニスタン、さらには、タリバン、ビンラディン、パキスタン、その他、うがって言えば、ホワイトハウスと軍との熾烈な頭脳ゲームまで著者は視野に入れているのかもしれない。
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著者ボブ・ウッドワードといえば、泣く子も黙る大統領ウオッチャー。この人の作品は大体読んできましたが、今回の「オバマの戦争」は、一二を争うほど面白い。そう面白いんです。ただ、割り引かなきゃいけないのは、著者が、オバマそのものにやや甘いこと。しかし、面白い。

なぜか。長広舌のバイデン副大統領、カリスマクリントン国務長官、やり手のゲーツ国防長官から、純真真っすぐ君の米軍首脳、アル中と酷評されるカルザイアフガニスタン大統領らと役者が揃っているのはもちろん、オバマの揺れ動く心中や言動がこれでもかと描いてあること。

その一方で、側近の功名心、裏切り、妥協、思い切り人間臭いところまで。そういう人情もののストーリーとして読むのも良いし、また、組織論として読むのも面白い。下手な経営論よりよっぽどこっちのほうがためになる。まさか、オバマが支配するホワイトハウスが、こんなに意思決定が輻輳しているとは。決まっていることがひっくり返され、オバマがなかなか統制がとれない、怒りを度々爆発。しかし、粘り強く、説得するところ、妥協点を見いだすところなんかはやっぱり常人じゃない。訳もこなれているし、読みやすい。

続編では、ビンラディン発見そのものへ至る熾烈であったであろうそのプロセスを読みたい。
by fromhotelhibiscus | 2011-08-08 22:45
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