2009年 10月 31日 ( 1 )

「公共事業論」と我々が唱えた「公益医療論」

あまのじゃくさんからこういったコメントを頂きました。

<市長のブログから引用>費用対効果論が声高に言われていますが、そもそも、利益の上がるものだったら民間がやります。そうでないからこそ、公共事業の出番があるはずなんですが。<引用終わり>

全くその通りですね。だから我々は市民病院問題で何回も申し上げたんです。「利益は上がらないが必要な医療は市民病院として残せ」と。何回も質問して恐縮ですが、上記の市長の「公共事業論」と我々が唱えた「公益医療論」は違いますか?

同時に今回の「市民病院は全て売却する」という結果と、上記の「市長の公共事業論」は整合性がとれていますか?



こういったご質問・ご意見は大歓迎です。まず、私たちは市議会等でこんな答えをしていました。

公的病院の医療とは何だろうか、武雄市民病院に当てはめてみればどうなるんだろうか。まず、国が公的医療機関に政策医療(厚生労働省が19の医療分野を示しています。)やへき地医療の担い手としての役割を期待しており、一般医療については民間医療機関が役割分担を果たしてきた経過があります。

厚生労働省の上記の方針からすれば、公的医療というのはかなり限定的なんですね。これがまず第一の論点。

さらに、武雄市民病院は、厚生労働省の「救急病院等を定める省令」に基づいて都道府県知事が認定した医療機関です。このような病院を救急告示医療機関(救急告示病院)といいますが、その実効的な内容は厚生労働省に確認しても多岐にわたりますが、ともあれ、救急医療を行う必要があるというのは自明です。

しかしながら、武雄市民病院がともすれば、開業医が本来行うべき2次医療に傾斜していく中(これを悪いというつもりはありません。)で、満足な救急医療ができていたか。医療従事者は頑張っていましたが、必ずしも期待に答えてこなかったというのが、私を含む市役所の分析です。たらいまわしや救急車が到着するまでに30分以上というのもざらにあったと報告を受けました。

なぜか。そもそも、そういった救急告示病院にふさわしい医師が不足していたのと同時に、平成16年の医師の新臨床制度の導入で、こういった田舎の公的病院の医師不足が加速化してきました。武雄市民病院で見てみると、平成16年に16人いた勤務医が私が市長になった18年に11人と30%の激減。本格的な市民病院見直しの前の数字です。

勤務医の確保がこのままではできない、というのが第二の論点。詳細は西日本新聞に寄稿した論考をご覧ください。勤務医の不足に伴う救急医療ができなくなること、できないこと、これが第三の論点。

また、全国の公的病院は8割は赤字です。交付税等の補助金を前提に成り立っているのが実情。その交付税がこれから増えることは、国の財政赤字等を考えた場合にありえる話ではないですし、自民党が政権交代間際に打ち出した「地域医療再生基金」(3100億円)も民主党政権になって一部停止になるなど、激震が走りました。これで、ますます、医療機器の更新等ができなくなります。

一定の赤字は引き受けるべき、という議論(これが見方を変えれば、公益論に発展するのですが。)は、市民病院見直しの際にも縷々言われましたが、医師が確保できて、救急医療をきちんと提供できるなどの環境が整備できれば、費用対効果論を超えた議論でありえるのかもしれませんが、全国の公的病院の例を見る限り、私はそのようなことはできるわけないと思っていました。これが四つ目の論点。

まだいろいろあるんですが、総務省等は全国の公的病院の惨状を受けてでしょう、規模の縮小や統廃合、民間移譲も含めた経営形態の変更など抜本的な改革を自治体に求めてきました。病院財政の悪化に留まらず自治体財政全般へ波及する前にとりうる対策を求めたものと認識しています。

武雄市民病院の池友会グループへの民間移譲は、求められる医療を残しさらに医療環境を充実させることと経営改善を同時に実現する手段として選択しました。

実はこのお話はこのブログでも少なからず書いてきましたが、こういったある意味地味な医療行政論は、リコール運動やリコールに伴う選挙といった政治的なハレーションに、かき消されたという印象を受けています。
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長くなりましたが、私は、民間か公営かという論点は、要は市民ニーズにどれだけ応えられるか、また、持続可能な医療態勢を構築できるか、考えた場合に、どちらが武雄市にとってふさわしいのか、この一点に尽きるのではないかと思います。そういう意味では、いつまでも、ガバナンスのはっきりしない公的病院を続けてジリ貧になり市民に過度な負担を求めることは必至の状況よりは、池友会グループに移譲を果たしたのは、議決を頂いた議会の見識だと思っています。税収もいただけますしね。これは、市民生活に直結した分野に振り向けます。

あまのじゃくさんの指摘する公共事業論と公益医療論の整合性は、繰り返しになりますが、武雄市にふさわしい医療の構築という面、厚生労働省・総務省の指針、また、二つの論の住み分け論からしても、整合性は取れていると思っています。こういった内容を、11月12日(木)の東京大学の講義で話してきます。そういう意味では、今、東大の講義ノートを作っていますが、あまのじゃくさんの見識あるご質問に深く感謝しています。

最後に、私のところには、助からなかったと思っていた命が助けていただいたというお話がたくさんあります。脳内出血の患者様、ご家族様のお礼が多いです。また、脊椎関係でどこの病院でも治せないという患者様が市民病院で治してもらったというお話も。まだ、課題はたくさんありますが、市民病院とタッグを組んで患者様のため、市民のために力を尽くす所存です。

また、議会等から求められている武雄市の経営母体・巨樹の会への関与もその方策についてもう少しで結論を出します。お待ちください。
by fromhotelhibiscus | 2009-10-31 20:40