【書評】血族の王―松下幸之助とナショナルの世紀

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血族の王ー松下幸之助とナショナルの世紀

この本は本屋さんで完全にジャケ買い。松下幸之助と言えば、リアルタイムでは、最晩年の「経営の神様」と祭り上げられたところしか知らないし、今でも僕の座右の銘の1つは、松下翁が語った『失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる』。

4歳で和歌山の地を家族とともに追われ、わずか9歳でふろしき包みひとつを携えて大阪へ丁稚奉公に出た少年は、不世出の大事業家として歴史を刻んだ、いわば、「健全」な立身出世物語を読もうとして買ったんですが、これが完全に外れ。そうね、岩瀬さんがそんなありきたりのものを書くわけが無い。

先日、Amazonの創業者でありCEOであるジェフ・ベゾスの評伝をこのブログでも書いたけど、この松下幸之助は、遙かに凌ぐ、「過剰、矛盾、狂気」を宇宙的に体現した人物。もう、外部や部下との血で血を洗う確執、暗い陰謀から目を覆わんばかりの家庭の問題までよくここまで書けたというのも、それだけ昭和が遠くになったということだと思うんだけど、もう、ハチャメチャ、ムチャクチャ。しかし、下劣な暴露本と一線画しているのは、やはり松下幸之助人物そのものと岩瀬さんの挟持なるものだと思う。

もちろん、評伝としても堪えられないほど面白いが、むしろ、僕は、丹念に描かれている明治、大正、昭和というジェットコースターに似た「うねり」に関心を持った。学校で習う歴史を書く人間も見習った方が良いと思うくらい。

最後に、224ページに、「(松下幸之助は)人情の機微を敏感につかみ取り、体験に根ざした言葉で訴えかける幸之助の感性の鋭さ」というくだりがあったけど、僕のまわりで成功している人はみんなそう。こんな太い日本人がいたんだ、感動しました。もうすぐ文庫でも出そう(速い!)なのでそちらを待ったほうが良いかもしれません。

by fromhotelhibiscus | 2013-12-29 14:47
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