【書評】グリード

今日は、慶應義塾大学で開催されたシンポジウムに出席のため、日帰り弾丸出張。往復の飛行機の中で、残りを読み進めました。
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リーマンショック直前、鷲津政彦はアメリカ経済を長年牽引した超巨大企業、アメリカン・ドリーム社の奪取を目論んでいた。敵は圧倒的な財力を持つ“市場の守り神”サミュエル・ストラスバーグ。巨大投資銀行でサミュエルを担当するジャッキーは莫大な利益に熱狂する社内で異変に気づき、ニューヨークに飛ばされた新聞記者の北村悠一は鷲津に巨大破綻の到来を示唆される。

こんな本です。「ハゲタカ」で名高い真山仁の最新刊「グリード」。

グローバル資本主義をドラマさながらに描くハゲタカシリーズは、アメリカの投資ファンドマネージャー鷲津雅彦が1990年代後半バブル崩壊の日本に乗り込んで企業を買収する「ハゲタカ」

続編として日本の大手企業との息詰まる買収合戦を描く「バイアウト(のちに「ハゲタカ2」)」

打って変わって、アメリカを離れてプライベートファンドであるサムライキャピタルを立ち上げた鷲津が、日本最大の自動車メーカーアカマ自動車を巡って中国国家ファンドと壮絶な戦い繰り広げる「レッドゾーン」。

そして、今回は第4弾「グリード」。強欲という意味です。米国のマネー至上主義という強欲を己が叩きつぶす、というのがお題目。

もちろん、文庫で「ハゲタカ」三部作を読んでから望むというのが一番なんですが、そうでなくても、読めます。そこは真山さんの力ですね。真山さんは、ハゲタカシリーズが一番面白い。もちろん、このグリードもお薦めです。

「動の真山」「静の黒木」と勝手に呼んでいますが、思い出すのは、古典的名著である黒木亮の「巨大投資銀行」。お互い虚実ない交ぜのもの凄い筆力で、僕らを鷲づかみしていくんだけど、やっぱり、真山さんは思いも掛けない展開に翻弄され、黒木さんには、緻密の静かな池の中に佇む。どっちが好きかと問われれば、どっちも好きです(笑)。

しかし、この国際金融舞台。こういうストーリーにするにはもう最高なんでしょうね。この世界には、まだまだ良著が沢山あります。リーマンショック以降、武雄市でも一時期税収ががくりと落ちました。僕の講演依頼がリーマンまでは断らなきゃいけないくらいだったのが、リーマンショック以降、半年くらいは、キャンセルも相次ぎ、全く無くなったことを思い出しました。出張の飛行機もホテルもガラガラ。ま、僕の講演依頼なんかはどうでも良いんだけど。リーマンショックがここまで及ぶとはね、って思いましたね。

リーマンショック以降、国際金融をもう一度勉強しなおそうと思って、いろいろな本に手を出しましたが、一番の教科書は、やっぱり、真山さんと黒木さん。楽しみながら、いろんな理論や動きが頭に入るという意味で、一石二鳥。次は黒木さんの一連の本を読みます。
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by fromhotelhibiscus | 2013-12-08 23:32
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