武雄市の財政〜畠中レポート〜

私は、平成15年4月から17年12月まで、大阪府高槻市役所で働きましたが、当時、財務部長だった畠中富雄さんには格別、公私を超えて、お世話になりました。

僕はお金を使う企画担当部長、畠中さんは財布を預かる部長、絶えず、畠中さんとは意見交換。意見交換どころか、大声で激論になったことも度々。しかし、不思議に馬が合い、仲が良い。

畠中部長のおかげで、当時、高槻市は、大阪府内の市町村で財政健全化ランキング第2位に上昇。

その畠中さんとは、前にもblogに書いたとおり、今でもお付き合いがあるんですが、以下の武雄市財政レポートを送ってくださいました。

前の中野財政課長(現総務課長)の財政運営が見事であったこと、さらには、今日、告別式で弔辞を読むことになるんですが、伊藤元康元市民病院事務長が市民病院民間委譲に果たした役割があって、財政状況が格段に改善していることを僕は忘れない。

畠中さん、ありがとう。そして、伊藤さん。あなたがひいた路線を引き続き堅持していくことを誓います。

以下、畠中レポート。ご本人の許可をとっていますし、一字一句修正していません。

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武雄市の財政状況について(平成17年度~22年度)

全国市町村の決算については、毎年、総務省のホームページで公表されています。毎年、私はこのデータをもとに、各項目別に人口一人当たりで全国順位をつけ、その市が全国でどの位置にあるかが分かるように加工しています。

去る5月に、平成22年度分のデータが公表され、今年も加工しましたので、結果をお送りします。樋渡さんが武雄市長になられた合併後の武雄市については、平成17年度から22年度までのデータがありますので、その間の財政状況の変化の各項目別に全国順位を付けて別表に示しました。(ただし、職員数では合併等でデータが示されていない市がありますので、データのある市のみの順位になります。)
 
その中で、基本的事項、特に目立った項目などを中心に、勝手ながら若干のコメントをさせていただきました。

1 武雄市の基本的事項

面積は195.44㎡で全国786市中368番目(H22)と中くらいに広い市です。人口(住基人口)については、平成22年度末には51,400人で全国順位は523番目に多い市です。しかし、平成17年度(年度末)52,546人に比べると1,146人(2,2%)の減少となっています。


2 財政構造

平成22年度の歳入238億1766万2千円は人口一人当たりにすると46万3379円で全国順位では786市中259位と比較的上位になります。その財源構成をみると、地方税(市税)は51億2155万8千円で歳入全体の21.5%を占めていますが、最大の財源は地方交付税で75億5607万8千円で歳入の31,7%を占めており、人口一人当たり147,005円で225番目に多い市になっています。

また、市税や譲与税交付金を合わせた一般財源(市が自由に使える財源)は60億1190万9千円で一人当たり116,963円644位と少ないのですが、これに地方交付税を加えた一般財源になると135億6798万7千円と、一人当たり263,969円になり順位も284位と上昇しています。地方交付税の調整機能によって武雄市の財政が成り立っている状況が分かります。

その他、国庫支出金30億9968万7千円で歳入の13.0%、地方債22億7987万5千円で同9,6%、県支出金19億3037万円で同8.1%と続いています。

市税についての平成22年度の全国順位は、人口一人当たり99,641円で786市中636位と市税収入の少ない市です。

税目別にみると、個人市民税は人口一人当たり32,479円で632位、法人市民税は同8,089円で444位、固定資産税が同49,348円で581位となっており、このなかで比較的法人が健闘していますが、個人市民税が少ないのが難点です。

地方の財源を巡って地方交付税の見直しなど、今後、国の財政難に伴う諸改革が不可避になる可能性が高いことを踏まえると、樋渡市長がこれまで企業誘致や温泉街の盛り上げ、地元特産品の販売促進など、一連の産業振興策を通じて市民を豊かにし、結果として個人市民税を始め、市税等の自主財源を増やそうとされている正当性が見えてきます。


3 特に目立った項目等

(地方債残高と積立金)
平成17年度から22年度まで間に、武雄市は、地方債(市の借金)の残高を減らし、積立金(市の貯金)を増やしておられます。

まず、地方債残高ですが、17年度は259億6868万9千円、人口一人当たり49万4209円で全国順位は777市中261位とやや多い市の部類に入ります。
22年度には237億4127万9千円(額は22億2741万円の減少)、同46万1893円で同289位と改善しています。

積立金は、今の時代の市民が将来の市民のための市の貯金ですが、これの備えの多寡は、その市の財政運営の健全性を図るバロメータだと思います。その意味で、武雄市は全国的にみても潤沢な積立金を持っている市で、しかもその額を着実に増やしており、非常に健全な運営をされています。

ちなみに17年度には79億5645万5千円、人口一人当たり15万1419円で全国順位777市中63番目に多い市になっています。22年度にはその額は91億8811万7千円と12億3千万円余の増額となっています。人口一人当たりも17万8757円で増額していますが、全国順位は他の市もさらに増額傾向にあることから786市中99位と下がりましたが、上位をキープしています。


(経常収支比率)
また特筆すべきは、経常収支比率で、17年度かあら22年度までに著しく改善したことです。経常収支比率とは、毎年経常的に入る市税や交付税等の財源に対して、経常的に出ていく人件費や公債費、福祉、教育などの歳出の額がどのくらいの割合を占めるかを表す数値で、少ない方が財政状況が健全であるとされています。

平成17年度は93,5%で全国順位は数値の少ない方から数えて777市中515位と悪かったのですが、22年度では84,1%と786市中145位と大きく改善しています。この要因としては、経常収支比率の中の人件費の占める割合が17年度30,5%から22年度22,5%に下がったことが大きい。

(人件費について)
経常収支比率の改善に大きく寄与した武雄市の人件費は、17年度には、その総額は46億6432万4千円で、人口一人当たり8万8766円、全国順位が777市中211位であったものが、22年度には35億8726万1千円に10億7706万3千円も減少し、人口一人当たり6万9791円で順位も781中368位と大きく改善しています。

これは、この間に多くの職員が退職された一方、行革を進めて新規の職員採用を絞ったことにより職員総数を減らしていることと、定年等により高い給与の職員が退職された一方、新規に採用された職員の給与が低い結果として平均給与額が下がったことによる2つの要因が推察されます。

17年度の普通会計の職員数は409人、これを人口千人当たりにすると7.78人で全国順位は職員数の多いほうから数えて443番目となります。22年度には367人と42人(10,2%)を減らしており、同7.14人、456位となりました。

また、職員一人当たりの職員給は、(職員が受け取る給与支払総額にほぼ匹敵する額のことですが、決算の職員給の総額を職員数で割った数値です。)17年度は669万1438円で235位、22年度は594万7283円で297位と、額と順位は下がっているものの、全国的にもやや上位に位置しています。

これをどう見るかは様々ですが、もしも、武雄市の職員数が少なくて、職員のレベルが高く、しかも、職員の個別の能力評価に応じた給与体系になっておれば、職員一人当たりの給与が高いことを武雄市民は、納得されるかもしれません。

この意味で、樋渡市長の行ってこられた市民病院の民営化、図書館の指定管理者制度への移行などの行革をみると、民間の力を活かしつつ市民サービスを向上させると同時に、市費負担を減らす理想的な行財政改革を実行されています。先ごろ出された今年度の職員採用も、こういう考え方の都市経営に共に参加する優秀な職員を全国から集めようとされているのであろうと推察しています。

頑張ってください。以上です。

by fromhotelhibiscus | 2012-08-09 09:44
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