【書評】ルーズベルトゲーム

池井戸潤。盟友・NY在住のヒミ岡島さんも読みあさっていますが、 NHKテレビドラマで、「鉄骨」、そして、尊敬するジャーナリストが、「これ!読んでください。」と言った「下町ロケット」。

前にblogに書きましたが、とてつもなく面白い。この下町ロケットの感想を、僕のFacebookにあげていたら、コメント欄に、「ルーズヴェルトゲーム」が面白い、感動する、と次々にメッセージが。

恐るべし、Facebook。
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で、読みました。「下町ロケット」と並ぶ面白さ。

あえて、違いを言えば、「ルーズヴェルトゲーム」のほうが、ストーリーの枠組みが大きい。リストラ、企業経営、企業間戦争、友情、挫折、裏切り、そして、一見あまり関係の無い社会人野球と、これでもかっててんこ盛りなんだけど、次々に連なっていく。

一般的に言えば、最後の野球の場面がこの小説の白眉なんだろうけど、僕は、臨時株主総会の攻防のところは、本当に息が詰まってどうしようもなかった。たった数ページで結論は分かっているんだけど、それでも、興奮のるつぼに落とし込む著者の力量は計り知れない。

なぜ、池井戸さんの本が面白いかというと、視点が低いから。マッチョ的な経営者的、武勇伝的なストーリーではなく、庶民・大衆的。当たり前で真っ当な生活があって、清廉な価値観が横たわっている。しかし、これを類い希なストーリー展開に持って行くとは。恐るべし。

「下町ロケット」は、登場者の善悪が分かれていて、ちょっとどうかなって思うところもって、この本も、そうだろうなって思ったんだけど、ある目立たぬ人物が意外や意外。悪が善になる。この道化(逆もまた然り。)があるかないかで、小説って俄然面白くなるのが、自説。

ベストセラーとなった「告白」、僕は救いようがないという意味で大嫌いだし、ストーリー展開も粗いので何でこんな本が売れるんだろうって思うんだけど、この本は真反対。「下町ロケット」もそうだけど、爽やかで鮮やかなラスト。まさか、こんなラストになろうとは。

「一番おもしろい試合は、8対7だ」とルーズヴェルト大統領が言ったところから打撃戦でもつれる試合をルーズヴェルト・ゲームというそうだ。

しばらく、この池井戸さんにはまりそうだ。野球をまた見直したのは、隠れた収穫。次は池井戸さんの何読もうかな。
by fromhotelhibiscus | 2012-06-28 23:44
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