【書評】 ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録

良い本でした。優れた回顧録というのは、単に面白いだけじゃなくて、いろいろ考えさせるもの。


西川さん、三井住友銀行頭取として、小泉さんに請われて、日本郵政の初代社長、そして、テレビでも何度も流れた鳩山邦夫総務大臣からの、かんぽの宿売却でのいじめとも言える仕打ち。亀井郵政担当大臣のクビ宣言。その前は、これが西川さんのメインの仕事になるんだけど、三井住友の不良債権の大胆な処理、平和相銀・イトマン事件、天皇磯田一郎追放、銀行大合併、いつも、この人が中心にいた。。本を読めば分かるけど、まさに現場の人。

特徴ある鋭いというか怖いお顔と、記者会見では怒りを露にしたり、ほんと、メディアに悪い意味でも好まれる人でしたね。

そんな中で、日本の銀行界を代表する、そして、政治の最前線に担ぎ上げられた第一線の人が、実名を挙げて、批判したり、評価したり。いいなって思う。これでも、西川さんからすれば奥歯にモノの挟まった感はあるのかもしれないけど、僕の場合、日本郵政の幹部にたまたま知人がいたのでいろんな西川評を聞いていたので、よくここまで書いてくれたというのが実感。しかも、西川さん、自身の政治音痴から始まり、USJ争奪戦の失敗談まで反省点をよく書いてくれてる。

ただ、惜しむらくは、銀行のことが中心で、日本郵政のことは、駆け足(題名からして仕方ないか。)だったので、もっと、なぜ、日本郵政がもとの国営に戻ると問題なのか、西川さんの視点でさらに書いてほしかった。


僕も市長就任時から「独裁」「ワンマン」って言われるし、西川さんも言われる。西川さんはかなり気にしていたようだけど、僭越ながら、全く、気にする必要は無いと思う。本当の意味での独裁は、「強制100パーセント、自由意志0パーセント」。これで物事が上手く行く訳がない。先述した、日本郵政の幹部は、西川さんのもとで伸び伸び仕事させてもらっている。ただし、信賞必罰だけどね、って笑ってました。そして、細かいところまでよく気配りされるとも評価してましたよ。

この本では、リーダーシップのほかに、スピードの重要性について触れられていますが、「スピードは最高の付加価値だ。」。我が意を得たり。

重ねて良い本でした。
by fromhotelhibiscus | 2012-01-09 22:59
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