【書評】わたしの旅に何をする。

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傑作。誤解を恐れずに、傑作中の傑作。

僕は旅好きで、いろんな国々をまわってきたけど、そのきっかけになったのは、多くの人と同じ、そう沢木耕太郎の「深夜特急」。

平成5年、もう18年も前ね、役所に入って365日で休めたのは2日くらい。しかも、帰りは大体午前サマ。休みが取れずに悶々としていたら、めでたく、官房総務課に異動。今度は国会担当ということで、8時−6時の夢のような生活。そう、朝8時から翌朝6時まで。22時間勤務。悶絶しました。しかし、日頃の行いが良かったせいか、珍しく国会が早く閉じて、朝8時ー夕方6時の生活へ。そこで読んだのが、「深夜特急」の文庫版。当時、確か、出版されたばかり。

読んだ瞬間に、体が沸騰し、上司に休みの許可を得て、向かった先が、沢木さんが最初に飛んだ、最も「深夜特急」で輝いている香港。沢木さんの足跡をたどり、完全にアジア、旅、香港にはまりました。それから、数々の旅の本を読んだけど、あまりに深夜特急の印象が強すぎて、全ての本が色褪せた。


それからずっと、大した期待もせず、旅関係の本を読んでたんですが、最近、どこかのレビューで書いてあった(どこで書いてあったのか、しっかり忘れた。)「わたしの旅に何をする。」というこれまた文庫版。

たいした将来の見通しもなく会社を辞め、とりあえず旅行しまくりたいと考えた浅薄なサラリーマンのその後」を描いた、出たとこ勝負の旅エッセイ。

とあって、ますます期待せず読んだのが、ぐいぐい惹き込まれた宮田珠己ワールド。抱腹絶倒系の笑い、シニカルな笑い、必ず、オチがつく。これは、僕も本を著したこともあるし、毎日、文章を書いていると分かるけど、かなり、推敲に推敲を重ねた出たとこ勝負とは全く違う、繊細で緻密な文章。しかし、読者にそれを悟られることなく、ごくごく軽いと思わせるその技量。

以前ね、本を読んで泣いていたら、飛行機の中で「大丈夫ですか?」ってキャビンアテンダントに優しく声をかけられたけど、今回は、同じ飛行機の中で、「ちょっと、お客様」で不信の声をかけられた。それは、僕がノイズキャンセリングのヘッドフォンで、パール・ジャムを聴きながら、大爆笑していたせいだ。

これは、反「深夜特急」だ!!!

旅好き、エッセイ好きにはたまらない本です。しかも、500円ちょっとで買える。日本は素晴らしい国だと思わせる痛快の文庫でした。
by fromhotelhibiscus | 2011-06-10 22:21
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